50周年あしたのジョー展行ってきました
連載開始50周年あしたのジョー展に行ってきました。
2018年ゴールンウィーク。会場の東京スカイツリーには鯉のぼりが並んでいます。
※ジョー展初日にレポートをアップしましたが、会期中だったので詳細を伏せていた箇所がありました。
展覧会終了につき、すべて、ぜーんぶ、洗いざらい版に修正しています。
Contents
リングロードを進んで展示会場へ
会場スペース634へ入ると、ちょっとした通路を進む構造になっています。
そこには、ジョーの試合を告知するポスターがならんでいます。
ウルフ戦→力石戦→カーロス戦(後楽園球場)→金龍飛戦→ハリマオ戦→ホセ戦 と、ジョーの歩みを振り返る仕組みになっています。
このポスターは絵葉書になっていて、買うことができます。
6枚セットで800円→5/3売切れたそうです。
高森城氏(梶原一騎氏の長男)とちばてつや氏の選ぶ15の原画
「あしたのジョー」を不滅の名作たらしめたのは、原作者と作画者の異なる個性の融合あってのことと良く言われます。
葉子は原作高森氏の設定したキャラで、紀子はちば氏の創出したキャラだと言う話は、有名ですね。
ジョー展では、お二方の選んだ15の場面の原画が展示されています。
1枚目が1巻の冒頭であることは、どちらも共通です。
高森氏の原作では、段平の昔話、最初に作ったジムの選手の試合のシーンから始まるはずだったのを、ちば氏が大きく変えたので、高森氏が怒ったという話は、みなさんご存知のことと思いますが、それでも、どちらもあの出だしを選んでいるのが面白いです。
他にどちらにも入っているのは、紀ちゃんとのデートです。
原画のページは違いますが、両方に選ばれています。
逆に力石の減量に関するページがどちらにも入っていないのも印象的でした。
まずは赤コーナー高森朝雄氏の15シーン
原作の梶原一騎氏(高森朝雄という名であしたのジョーの原作を書いていました)は、すでに故人となっているため、長男の高森城氏が選んだ原画です。
ああ。この城さんというお名前ですが、読みは「じょう」です。
ジョーとは関係なくつけた名だそうです。
(『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡に書かれています)
高森城氏の15シーンは
- 冒頭場面(KC1巻 P.7~8)
- 葉子が裁判所に現れるとこ(KC2巻 P.9)
- 対力石少年院公式戦でのクロスカウンター(KC3巻 P.130)
- 対青山亀の子ガード場面(KC4巻 P.163~164)
- 退院して山谷に帰った夜、布団の中で泣くジョー(KC5巻 P.87)
- 対ウルフ戦での力石「立つんだジョー!」(KC7巻 P.103、130)
- 会長連の矢吹丈抹殺計画密談会議にちょっと顔出す葉子(KC10巻 P.51~52)
- カーロスとのスパーリング in 白木ジム(KC12巻 P.41~42)
- カーロスとのスパーリング in 丹下ジム(KC13巻 P.112~113)
- 紀ちゃんとデート 真っ白な灰(KC14巻 P.99、102)
- 東洋タイトルマッチ なぜ立っちまうんだろう(KC16巻 P.93)
- 水ぶっかけ(KC16巻 P.97~98)
- ハワイのビーチにホセとその家族(KC17巻 P.45~46)
- グローブが葉子に(KC20巻 P.255)
- ラストシーン(KC20巻 P.259)
でした。
高森氏の白木葉子シーン
それぞれの原画に選者高森城氏のコメントが添えられています。
裁判所のシーンでは、
高森朝雄氏が葉子は少年院でジョーに反抗された時からジョーを愛し始めていたのだと言っていたとありました。
この時↓です。
そうですよね。
あの時から葉子はジョーを好きでした。自分でも気づかずに。
そして力石の死後、葉子は白木ジムの会長になります。
会長連陰謀会議に現れる葉子。この場面が入っているとは意外でした。
高森氏は、葉子とジョーの関係を「妥協を許さない厳しい愛」と呼んでいて、ジョーのような相手にそんな愛を貫くには、これくらいの強さが必要なのだと話しています。
そして
高森朝雄氏は、「葉子には、ジョーがダメになっていくところを見たいという気持ちがあるから、強いボクサーを連れてきてジョーに当てるのだ」と話していたというコメントが。
エスメラルダの時からジョーを好きになっていた葉子には、ジョーの破滅を望む矛盾した感情があったのだと。
なのに葉子は、カーロスとスパーリングするジョーが野性に戻っていくのを喜んでいます。恍惚としているようにすら見えます。
葉子は自身の愛情も憎しみも認めていなかったでしょう。
プロモーターになったのは力石の死を無駄にはさせないという気持ちからなのだと、自分自身でもそう考えていたと思います。
葉子はいつ自分の本心に気付いたのでしょう。
ジョーが減量して臨む東洋タイトルマッチで、とうとう葉子は段平に棄権を要求します。
コメントには「この時が葉子が愛に屈した時」なのだとありました。
この試合の前の控室では、丹下ジムの後輩たちが葉子のことをジョーの彼女だと噂しています。
ジョーと葉子の関係は実に複雑ですが、一歩離れたところから見ている者があっさり本質を見抜いているとは、面白い現象です。
高森氏の力石徹シーン
ウルフ金串との試合でダブルクロスに倒れたジョーを力石が「立て」と叱咤する場面。
そして試合後、群衆をかき分けてジョーの前に駆け出す力石。
この時の力石の興奮を見れば、後にあれほどの減量をするのも分かると解説されていました。
アッパーでジョーに勝ったときでさえガッツポーズ一つしなかった力石が唯一感情のままに動いていたのが、この場面です。
冷静ないずまいの奥に燃え盛る炎を隠す男。
この人と心を通わせたジョーがうらやましくすらある、究極の存在ですね。
高森氏のカーロス・リベラシーン
カーロスという魅力的な登場人物を考案するのに七転八倒の苦心をしたというエピソードも。
どんなに明るいキャラを出しても、陰性の力石の存在感を上回ることができず、結局次々に新しいボクサーを出すほかなかったとのこと。
カーロスの出る場面が2つセレクトされていますが、どちらもスパーリングで、原作ではエキシビションと後楽園球場で2回あった試合ではないのが興味深いところです。
高森氏のホセ・メンドーサシーン
原作高森氏のお母さまが亡くなるとき、しきりに「ハワイへ行こう」と話していたという思い出話が語られていました。
これがお別れになり、ハワイ旅行は実現しなかったそうです。
家族でハワイへ。
高森氏にとっては幸福な家族を象徴する行為だったのでしょう。
展示されている原画は見開きでホセの家族が描かれているページだけですが、あの時、木の陰でジョーがそれを見ているのですよね。
続いて青コーナーちばてつや氏の15シーン
ちばてつや氏のコーナーもまた、お人柄の垣間見えるセレクトでした。
ちばてつや氏の15場面
- 冒頭(KC1巻 P.5~6)
- 東光特等少年院(KC2巻 P.36)
- 力石登場(KC2巻 P.99~100)
- 林屋初出勤(KC5巻 P.107~108)
- ウルフカウンター(KC6巻 P.27~28)
- 山谷住人のプロテスト合格祝い in 丹下ジム前(KC6巻 P.133~134)
- リングに吐くジョー(KC10巻 P.227~228)
- ドサ回り先でカーロスの試合見てランニングに行くジョー(KC11巻 P.175)
- 紀子とデート わたしついていけそうにない(KC14巻 P.103~104)
- ジョーの減量(KC15巻 P.113~114)
- 金龍飛の父親殺害(KC15巻 P.199~120)
- 西と紀ちゃんの結婚式(KC19巻 P.177~178)
- 好きなのよ矢吹くんあなたが(KC19巻 P.211~212)
- 13Rジョーの目(KC19巻 P.227~228)
- 判定ホセ(KC19巻 P.257~258)
ちば氏の力石徹シーン
こちらで選ばれていたのは、ジョーと力石の最初の日です。
少年院からの脱走を阻止されたジョーが涙を浮かべながら殴り掛かった大男は信じられないほど強かった、あの場面。
ふたりの人生が変わった時でもありますね。
1コマで済むセリフを2ページに渡らせて描くことで、力石という人物を印象づけたとコメントされていました。
力石の顔は、ナポレオンがモデルだそうです。
この本「ちばてつやとジョーの闘いと青春の1954日」 [ ちばてつや ]に書かれています。
ちば氏の山谷シーン
林屋の紀ちゃんの両親のモデルが誰かって、もしかして皆さんご存知の話かな?
満州から引き揚げたあと、ちば氏のお父さまが乾物屋をはじめられたそうで、林屋夫婦のモデルは、ご両親だったのですね。
この展示企画の話を聞いた時、真っ先に思い浮かべたのは、ジョーのプロテスト合格の日の山谷の絵だったそうです。
丹下ジムの前で宴会が始まっている場面。
あの絵の中には、先生ご本人が忍び込んでいます。
単行本6巻 P.133~134の見開きです。持っている人は探してみて下さい。
ちば氏のボクシングシーン
クロスカウンターの絵は、ちば氏でさえも描くのが大変なほど難しいそうです。
殴りあうような場面は難しいのだと思います。
私の場合、他の漫画の乱闘シーンは、何やってるのか全然分かりません。
たくさん線が描いてあって、バキッとかガッ!!とか文字が出てきているだけに見えて、何が何だか。。。
「あしたのジョー」は、ちゃんと分かります。
改めて見ると、両者の身体のひねりなど、本当に描くのが難しそうです。
これが少しでも狂うと、とたんに全体が「なんか変」になってしまいそう。
渾身の一枚。間近で堪能できました。
ちば氏のご苦労とシンクロするシーン
週1連載の大変さが、そこかしこに見えます。
リングに嘔吐するジョー。
あの頃からドサ回りに出る頃までは、ご自身の体調も思わしくなく、休載もありました。
巡業先のジョーが雨上がりの道へロードワークに出ていく頃、ちば氏も回復しはじめ、描かれるジョーの目にも光が戻ってきます。
ちば氏の林紀子シーン
おなじみ(であろう)疑問紀ちゃんバージョンと言えば、結婚式の表情の意味じゃないかと思います。
ウエディングドレスの紀ちゃんの原画のところで、じきじきにコメントがされています。
読んでもはっきりとは分かりませんでしたが(笑)
ちば氏がよく話されているように、キャラクターは、その性格が設定された瞬間から自由に動いて言葉を発する、命を持った存在になるのだと思います。
ちば氏の頭の中の紀子があんな表情をしていた。
それをそのまま描いたということなのでしょう。
どちらのセレクトにも入っているジョーと紀子のデート場面
どちらにも入っていますが、高森氏とちば氏では、紀子の捉え方が違います。
高森氏にとっての紀子は、ある意味葉子との対比を表現するもので、平凡という、当たり前に思えてジョーには手に入らないものを体現した存在だったようです。
私も紀子についてはそういうふうに捉えていました。
なので、あの場面で「ついていけない」と紀子が走り去った時にジョーが失ったものは、平凡への憧れだったのかなと解釈していました。
でも、ちば氏の考える紀子はもっと重要で、ジョーは紀子を好きだったのだと。
これは、たびたび語られていることで、ちば氏の中では絶対の事実という雰囲気です。
ふたりはお互いに想いあっていたけれども、その恋は成就しなかったのだと。
そうなるとあの場面は、打ち明けあうこともないまま恋が終わったエピソードになり、ジョーも紀ちゃんも失恋したことになります。
そう言われればそういうふうにも見えてきて、これがなんとも…
いずれにせよ、この時にジョーの話したことがラストシーンにつながる、重要な場面です。
原画で見る力石徹vs.矢吹丈
バンタムでの力石戦の原画も何点か展示されています。
頬カットアッパー、寸止めアッパー、力石両手ブラリ…と試合が進んでいきます。
カラー原画
カラーの原画も何枚か。
扉絵に使ったものでしょう。
アニメ「あしたのジョー」
展示会場の奥のほうから「わしのジョー!!」だとか「♪光ってNight Tonight」だとかが聞こえてきます。
あしたのジョー展は、アニメのコーナーに進みます。
上は、公式サイトにあるイメージ図です。
実際の展示とは異なる場合があります。とありますが、ほぼ同じでした。
出崎氏の手法だという止め絵が、たくさん展示されています。
ハーモニー画?
説明は書かれていましたが、私には何のことだか良く分からず…
でもジョー2には印象的な場面で止め絵というのが多用されていたことなら分かります。
ジョーとホセの競馬のシーンなどは、思い出そうとすると止まっている絵ばかりが頭に浮かびます。
ジョーの帽子を拾ったホセの笑い声が聞こえてきそうな、あの…もう分かりますよね。アレですアレ。
名場面が壁一面にずらーっと並んでいて、改めて見るとどれもすごい力作です。
アニメのコーナーでは、1期と2期のオープニング映像と、最初のパイロットフィルム(11分くらい)、アニメ2のダイジェストの3つの動画(5分くらい)がエンドレスで流れています。
ずっと聞こえてたのこれか。
パイロットフィルムでは、鬼姫会との乱闘が違います。
強きことは美しきかな。
ジョーのケンカを見るのが大好き。
アニメ1の初代オープニングの絵は、なんとなくみんな顔が違うなと感じていましたが、あれはパイロットフィルムの絵を採用していたのですね。
アニメ2ダイジェストでは、リングを見上げるロバートが「カーロスおめでとう。本当に素晴らしい試合だ」と言うところで、ちょっと涙出そうになって、やば。
横長大画面でクロスカウンター
アニメのコーナーを出ると、横に長いモニターが設置されていて、あしたのジョー原作の名場面をつなぎ合わせてストーリーが進むように作られた動画が上映されています。
絵の見せ方で動画にする試み。
使われている絵は、すべて原作の絵です。アニメではなく。
動くように作られた絵ではなく、漫画にある絵を切り取って重ね合わせ、それぞれを動かすという方法です。
何言ってるのか分からないですか?分からないですよね。
たとえば、
背景の上に、ブタに乗ったジョーの絵を切り取ったものを乗せて、ジョー on ブタパーツだけを横に動かすと疾走するブタに見えますよね。
すべてがその手法で作られているってことです。
ブタの激流を遡上する力石は、ちょっと苦しいですが、ボクシングのシーンでは、本当に動いているように見えます。
左側から左腕を伸ばしたジョーを切り取った絵、右側から右腕を伸ばした力石絵が、真ん中へすーっと動いて来て、腕がクロスすると力石絵が下へするっと沈む。
だとか。
ジョーの出した右腕の下にもぐる力石が、アッパーとともに上がってくる。
だとか。
そして、バンテージを巻いたふたつの手が中央ですれ違って、慟哭するジョーと進みます。
いつかYoutubeとかで見られるように…は、無理かな。
横長画面って、すごく横長なのです。
上の画像の通り、ワイド画面を横にふたつ並べたサイズです。
あの横幅あってのクロスカウンターなのかなと。
ジョーコーナーのおしまいには梶原生原稿が
梶原氏直筆の生原稿が展示されていました。
すべての生原稿を保管していたちば氏でしたが、雨漏りに遭って今ではその箇所しか残っていないというあの原稿です。
生原稿については、こちらで書いています。
最終話収載のマガジンの表紙原画もありました。
あまりガン見している人はいないようでしたが、リングを囲む観衆の中には力石もいて、勢ぞろいの絵なのです。
この表紙は、他のジョー関連出版物にも掲載されたことがありますが、「少年マガジン」のタイトルはもちろんのこと、たくさん文字がかぶさっていて、リングには高森&ちばコンビが握手している写真が乗っているので、バックという扱いになる絵を詳細に見られるチャンスは、そうはありません。
西もいるし、ゴロマキ権藤、ジム三下連…思い当たる人は、大体描かれています。
テレビ関東大橋運動部長だけは発見できませんでした。アジア拳大高でさえいるのに。
次のブースがメガロボクスの展示でした。
メガロボクスの話は略。
最後に燃え尽きたジョーになって写真を撮れるスペースがあっておしまいです
これです。
スクリーン前の椅子に座って前かがみになり、笑顔で目を閉じれば、あなたも矢吹丈。ということなのだと思いますたぶん。
「完」の字のデカさが、リアリティを醸し出してます。
ご希望であれば、セリフもつけられます。
これで、あしたのジョー展はおしまいです。
大盛況のグッズ販売
ショップがやたら充実しています。
販売しているグッズは、ここに出ているのでどうぞ
『あしたのジョー展』商品情報
Tシャツやクリアファイルが人気のように見えました。
大判せんべいというのは、本当に大判です。直径が20㎝くらいあります。
見ているとみなさんかなり豪快な買いっぷりで。
最終日近くは品切れになるものもあるかもしれません。在庫量知りませんけれども。
→品切れ続出でした
2日目。缶バッジ付ドロッブが売切れ
3日目。あしたのために湯飲み完売
4日目。チョコクランチ完売
5日目。RSCコラボTシャツCのXL完売
6日目。箔押しUVポスター、コラボT望月S、丹下拳闘クラブTシャツM、リングロード絵葉書セット完売です。
7日目。コラボT望月MとXL、キャンパスパネル、モバイルバッテリー(白と黒)、あしたのためにてぬぐい、マスキングテープ白と赤、葉書バラ6、ジョーT(MとL)、複製原稿F、DVDブック(2)、ジグソーパズル完売
最終日。丹下ジム手ぬぐい、番外地ジムT(M)、眼鏡ケース、モバイルバッテリ、絵葉書バラ7完売
こんなに物が買われる展覧会を見たのは初めて。
アニメ系では普通なの?
あしたのジョー×すみだ
エレベーターを降りてジョー展のスペース634へ向かう途中に墨田区の物産コーナーがあるのですが、そこに「あしたのジョー×すみだ」という、ちょっとしたスペースが作られていました。
「あしたのジョー×すみだ」って何かって…それは、よく分かりませんでした(笑)
2020年東京五輪のボクシングは墨田区の両国国技館で行われるので、それをアピールしているのかな?
↓
2018/9/13「あしたジョー×すみだ」について分かっていることをまとめました