【あしたのジョー全出来事21-2】葉子のビンタとジョーの罵倒
「あしたのジョー」をアニメと原作の違いから振り返っています。
ジョーにビンタした葉子は思わぬ反撃を受けます。
エピソード
葉子のエスメラルダを「見ていられない」と言って体育館を出たジョーを力石が追ってきます。
決闘が始まろうとするその時、葉子の「お待ちなさいっ力石くん!」という声が響き、力石はそちらに気をとられてジョーから目を離してしまいます。
ジョーはそのスキを逃さず、力石に襲いかかりました。
よそ見したところを狙ったとはいえ、結構当たってます。
やがて力石は崩れ落ち、葉子はジョーに「卑怯だ(文意)」と言ってビンタを食らわせました。
続けて葉子は「なぜ私を悪い風にしか見ないのですか(文意)」と尋ねます。
うん。確かに知りたい。ジョーがどう答えるのか聞きたい。
ジョーの答は「裁判所で俺を見る目つきが蔑みに満ちていたから(文意)」
だってそれは寄付金詐欺犯を見る目つきだから…
「ちょっとだまし取られて怒るくらいならボランティアの慰問などするな」というのがジョーの理屈らしいです。
それとこれとは話が違うと言うか、苦し紛れで支離滅裂に聞こえるこの説明…
ところが!
葉子が余計なことを言ったために戦況が逆転します。
葉子は、「段平や子供たちがここへ入れるようにしたのは私だ」と告げたのです。
ジョーが言わんとしていたのは「対象に望ましい反応を強要する親切は本当の善意ではない。恩着せがましいあんたは偽善者だ」ということです。
葉子はうっかりジョーの主張を裏付けてしまいました。
そしておれが感謝感激して涙をこぼさなけりゃ
また そこで腹を立てるんだ…
KCコミックあしたのジョー(2)P220 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
ジョーの弁舌は止まりません。
(前略)
はるか雲の上から優越感でやってることなんだ
うわべだけの愛 かたちだけの親切
いわばすべてにせものなんだな!
(中略)
もしかすると葉子お嬢様あんたよ
おれやここにいるあわれな連中のためじゃなく
自分のためにこんな慈善事業をやる必要があるんじゃないかね
(後略)
KCコミックあしたのジョー(2)P221 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
当たっていたでしょう。
私の目にもこの頃の葉子はそういう人に見えます。
葉子は馬鹿ではありません。
自分のしていることにどこか違和感を感じることはあったのでしょう。
言葉もなく、恐れおののいた顔で、受けた衝撃に耐えています。
収容生たちがざわめきはじめると、力石が立ち上がりました。
この後力石があのセリフを言います。
高森氏はこの時葉子はジョーに惚れたと話していた
2018年の「あしたのジョー50周年展」に展示された原画には、高森氏のご長男とちばてつや氏のコメントが添えられていました。
原作の高森朝雄氏は「葉子は、少年院でジョーの反抗を受けた時からジョーを愛し始めていた(文意)」とご家族に話していたそうです。
50周年展レポートはこちらに
該当箇所
コミック:2巻 P.211~222
アニメ1:第12話「燃える太陽に叫べ」
コミックの掲載箇所としているのはKCコミックでのページです。
原作とアニメの相違点
起きることは大体一緒です。
でもひとつだけ大きな違いが。
原作のジョーが力石への連打を中断したのは、葉子が間に入って来たからです。
劣勢の力石の前に立ちはだかってジョーを止めたのです。
ひっぱたかれた時心底驚いた顔をしているジョーですが、この時も内心びっくりしたことでしょう。
アニメの葉子は、後ろからジョーの両腕をつかんでやめさせています。
ジョーの前に立つか後ろから抑えるかの違いだけで、けんかを止めることに変わりはないのですが、あの状況でジョーの前に入るのは、相当勇気がないとできないことと思います。
もっとも私が力石なら、こんなことされたくないわ。
力石の庇護者でありジョーとは対等である葉子の立場がよく出ている場面です。
葉子にひっぱたかれたジョーの顔
KCコミックあしたのジョー(2)P215 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
ジョーに本心を指摘された葉子の顔
KCコミックあしたのジョー(2)P221 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
同時に、後の力石のバンタムへの減量強行は、飼い犬のように扱われることへの反発が少しだけ含まれていたのかな?と想像させる出来事でもありました。