【あしたのジョー全出来事234】カーロスのボタンと残酷女
「あしたのジョー」すべての出来事を漫画とアニメの違いを確認しながら振り返っています。
アニメ、漫画の該当箇所も書いておくので「あの場面は、何巻だっけ?アニメの第何話だっけ?」と思った時にもご活用ください。
エピソード
ハリマオ戦後の控室に葉子がやって来ます。
ジョーは、カーロスを見るなと言って退出を要求しますが、どう怒鳴っても葉子が帰らないことは、知っています。
葉子は、カーロスを預かって、キニスキー博士に診察を依頼すると言っています。カーロスを渡したくないジョーですが、他の選択肢は、ありません。
ジョーは、自分のシャツをカーロスに差し出し、着替えさせます。
うれしそうにシャツを受け取るカーロスでしたが、ボタンがはめられません。
Dr.キニスキーの言う、脳神経が侵されて指が震えるという現象でしょう。
見かねたジョーが、代わりにボタンをかけてやろうとします。
でも、ジョーにもそのボタンがはめられません。
両手をじっと見て、もう一度やってみようとしますが、どうしても出来ません。
テーブルにあった湯呑みを力任せに床に叩きつけるジョー。
葉子が、ゾっとした顔でそれを見ていました。
該当箇所
コミック:19巻P127~135
アニメ2:第39話「ジャングルに…野獣が二匹」
コミックの掲載箇所としているのはKCコミックでのページです。
原作とアニメの相違点
控室で起きることは
- ジョーがカーロスと同じ症状を見せる
- カーロスの身柄は白木ジムが預かることになる
のふたつで、これは、どちらも変わりませんが、実は物事の順序が少しずつ違います。
原作
カーロスのジャブに涙するジョー
↓
葉子in
↓
ジョー泣きながら葉子を怒鳴る
↓
葉子「タイトル防衛おめでとう」ジョー鼻白む
↓
ジョー、カーロスに着替えのシャツ渡す
↓
ここで葉子はホセの日本興行権の契約書を段平に渡してサインを求める
(原作には契約書の受け渡しという用事があったのです)
↓
葉子、カーロスを預かると言う
ジョーは猛然と反対
↓
段平はジョーに背を向けた状態でサイン
向かいに座る葉子からは、ジョーが見える
↓
というポジションで、ジョーがボタンに苦心
↓
葉子愕然
↓
葉子、カーロスをキニスキー博士に診せると言う
↓
ジョー、湯飲み割る
です
アニメは
カーロスジャブ
↓
ジョー着替え渡す
↓
葉子in
↓
ジョー怒
↓
葉子、カーロスを責任を持って預かると言う
↓
ジョー「なんの責任か言ってみろ」
↓
カーロスがボタンはめられずに嗚咽
↓
ジョーもボタンだめ
↓
葉子、キニスキーに診察してもらえば、あるいは…
↓
ジョー、ボタンにリトライして引きちぎってしまう
↓
湯呑み
です。
原作には、契約という用件があったこと、アニメでは、ジョーが葉子に、「なんの責任だ」と詰め寄ることが大きく違う点です。
また、ボタン場面でアニメのカーロスは、泣いています。
原作では、困った顔はしていますが、涙は流していません。
原作のカーロスは、終始うっすらと笑ったような表情で、悲しみという感情も消失しているように見えます。
ところで…
原作では、ジョーは、シャツを着て会場へ来ています。
KCコミックあしたのジョー(18)P220 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
計量の時は、ボタンのはめはずしが出来ていたはずです。
ハリマオ戦は、葉子が、ジョーにホセと戦う強さを取り戻させるために組まれた、ジョーのための試合でした。
でも、
試合の前には出来ていたことが、試合後に出来なくなった。ハリマオ戦で急激に進行したということだとしたら…
「皮肉な結果」だとか「裏目に出た」だとか、そんなありきたりな言葉では表現できない事態です。
この時ジョーが、カーロスを葉子に渡すまいとするのは、葉子を、ビジネスのことしか頭にない人間だと考えているからです。
おまえさんのようなビジネスのかたまりみてえな残酷女に
こうして
か弱い赤ん坊のようになっちまったカーロスを渡せるかっ!KCコミックあしたのジョー(19)P130 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
カーロスのことで気が立っていての言葉ではありますが…
「ビジネスのかたまりみてえな残酷女」
ボクサーを、ビジネスのため、金儲けのための駒だと思っている血も涙もない女プロモーター。
葉子をそう思っていて、ジョー自身もその駒のひとつなのだと考えているのでしょう。
ならばなぜ世界タイトルマッチの権利を手離して、ハリマオ呼ぶ?
葉子は確かにボクサーを駒として扱ってる。でもビジネスなんて関係ない。
ジョー以外のボクサーをジョーのための駒に使ってる。
どうして、いつまでもこれに気付かないのか。
その行為を感謝するのも嫌悪するのもジョーの勝手だけど、全部ジョーのためにやってることだと、せめてそこは分かれってんだよ。
本心では気付いているけれども、認めるのが怖いから気付かないことにしているようにも見えます。
葉子の気持ちに気付けば、自分自身の気持ちにも気付いてしまう。
自分の運命を知っているジョーは、それを知るのが怖いのではないのかなと。
タイトルマッチの権利は今、葉子のもとを離れ、間もなくホセ・メンドーサが来日します。
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