【あしたのジョー全出来事230】ワタシ無冠ノ帝王トイワレタヨ
「あしたのジョー」すべての出来事を漫画とアニメの違いを確認しながら振り返っています。
アニメ、漫画の該当箇所も書いておくので「あの場面は、何巻だっけ?アニメの第何話だっけ?」と思った時にもご活用ください。
エピソード
ジョーとハリマオの試合が行われる東京体育館の前に、外国人が立っています。
試合が始まって閑散としているゲートをチケットなしで通過しようとする彼を、係員が制止します。
読者にはそれがカーロスだと分かりますが、会場スタッフは、誰一人気付きません。
無理もありません。
破れて泥だらけの服、髪はボサボサで無精ひげの伸びたその男が、あのカーロスだと思えるはずが…
カーロスは、自分はボクサーでチャンピオンと戦ったと言っていますが、よく聞き取れません。
カーロスは、ここはボクシングの会場で、ならば自分の入っていい場所だと考えているのでしょう。
なおも無券で入場しようとして突き飛ばされ、水溜りの上に転んでしまいます。
係員たちは、どこかで見た顔だと囁きあいますが、カーロス・リベラだとは思い至りません。
この人たちにカーロスだと気付いてほしくない。
ジョーも葉子もすぐ近くにいる。どちらかに会えれば…。
でも、試合は始まっています。
該当箇所
コミック:18巻P234,19巻P10~12
アニメ2:第39話「ジャングルに…野獣が二匹」
コミックの掲載箇所としているのはKCコミックでのページです。
原作とアニメの相違点
カーロスの涙
アニメでは、会場入口での場面が長く、カーロスは、かつての日本での思い出、ジョーと屋台で酒を飲んだことや雪が降っていたことをつぶやき、立てかけられた試合の告知ボードのジョーの写真を見て、涙を流します。
「お前、友達ね」と言いながら泣いているカーロスでしたが、スタッフには、雨なのか涙なのか分からず、カーロスは雨の中に捨て置かれます。
カーロスは、今ここでジョーが試合をしていると理解しているように見えますが、なぜ泣いているのか。
以前と違う自分自身に心のどこかで気付いている?
原作では、水溜りにはまって辛そうな顔をしますが、長くは話さず泣いてもいません。
ワタシ無冠ノ帝王トイワレタヨ
KCコミックあしたのジョー(19)P11 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
という台詞は、昔はそう呼ばれていたけれども今は違うというニュアンスを含んでいるようにも取れますが、これを言うときだけカーロスの目にキっと力が入っていて、今も変わらず強いボクサーなのだと信じていての言葉と考える方が自然に感じられます。
KCコミックあしたのジョー(19)P11 (c)高森朝雄・ちばてつや2012
天気が違う
アニメでは、試合前からの雨が降り続いていますが、原作では、もう止んでいます。
原作では、会場へ向かってくる葉子が、車中で「もう雨は止む」と言ってて、その通り雨は上がりました。
雨が上がることが、ジョーの試合の行方、野性の復活を表現しているのだろうと、そこを読むときには感じるのですが、カーロスが…
カーロスと雨上がりの組み合わせは、以前にもありました。
ドサ回りの遠征先でのことです。
夕立にあって旅館に引き上げたジョーは、板の間で洗濯物を干してから、テレビでカーロスの対南郷戦を観戦。
肘打ちを見抜いて胸の高鳴るジョーが、もう一度外を見ると雨が上がっているので、まだぬかるみの残る道を走り始めます。
(11巻P142~178)
力石を失って苦悩するジョーが回復していく、ターニングポイントとなる雨上がり。
あの日の雨雲をはらったのは、カーロスでした。
同じように雨は止み、この後ジョーはカーロスと再会しますが…。