【あしたのジョー】ジョーは葉子をどう呼んでいたか~「葉子」は3回だけ
「あしたのジョー」は、矢吹丈と白木葉子の悲恋の物語という一面があるようにも見える作品です。
ストーリーの中で恋愛がらみのエピソードの占める割合は低く、そうした要素はまったくなかったと見ることもできなくはないのですが、一方でジョーと葉子は運命の相手だったようにも感じらます。
ジョーにとって葉子はなんだったのか。
後にちばてつや氏が、ジョーは紀子を好きだったという論旨のことを言っているのは、ひとまず置いておくとして、作品の中のジョーの言動から探ってみたいなと。
そこで呼び方です。葉子の呼び方。
「葉子」と呼んでいる印象がありますが、直接話しかけるときには、ほとんど「葉子」とは呼んでいません。
ジョーは葉子をなんと呼んでいるか。
原作の最初から最後まで、全部数えてみました。
Contents
ジョーは葉子をどう呼んでいたか
原作全編で16通りの呼び方 あんた率49%
他の人との会話など、葉子がそこにいないときに葉子の話をする場合には「葉子」と言っているので、ジョーは葉子を呼び捨てしていたというイメージがありますが、直接話す場面では、「葉子」は3回だけです。
一番多かったのは…(おそらく)ご想像のとおり「あんた」でした。
ひとつのセリフの中で2回同じ呼び方が出てくる箇所は1回とカウントしています。
あんた率高いです。
呼びかけているのは全部で52回。うち26回が「あんた」なので、あんた率50%になります。
ジョーは葉子をいつどこでどう呼んだのか一覧
「セニョリータ」は、どこで出たのか、「葉子」の3回は、どんなシチュエーションだったのか、物語の最初から最後までの葉子の呼び方一覧を作っておきました。
一覧を見ずに、いつどこで使った呼び方なのか思い出してみるのも面白いかと。
「通訳さん」「美人運転手さん」あたりは簡単ですね。
掲載ページ | 呼び方 | シチュエーション | セリフ | |
2巻 | P2 | お嬢さま | 裁判所で葉子に食ってかかったとき | へへへっ! ようようお嬢様 こんな俺の姿を見て少しは腹の虫がおさまったかい |
2巻 | P219 | あんた | 少年院の慰問劇でエスメラルダ役をミスキャストだと言うジョーに、わけを言えと葉子が問い詰めたとき | へへ…最初あんたに会った時さ 覚えているかいあんた |
2巻 | P221 | 葉子お嬢さま | 上のつづき 葉子を偽善者だと指摘するとき | もしかすると葉子お嬢さまよ |
2巻 | P221 | あんた | 上のつづき | あんた、俺やここにいるあわれな連中のためじゃなく 自分のためにこんな慈善事業をやる必要があるんじゃないのかね |
2巻 | P225 | お嬢さん | 上のつづき 葉子が、ジョーと力石の決着をボクシングでつける案に賛成したとき | ほとほと感心したぜお嬢さん |
2巻 | P225 | あんた | 上のつづき | それが万事あんたのやり口なんだ |
2巻 | P225 | あんた | 上のつづき | あんたが見たいと願っているのは立派なスポーツでもなんでもなく、力石にこてんぱんに叩きのめされてリングにのびた俺の姿さ 女王さまを侮辱したにっくき矢吹丈のな |
3巻 | P123 | お嬢さん | 少年院でのジョーと力石の試合中 葉子が、あまりの凄惨さに見ていられず席を立ったとき | 自分で火をつけておいて…か…火事場から逃げ出すって法はないぜ ええ?お嬢さんよ |
3巻 | P123 | あんた | 上のつづき | そうやってきれいなお目々をしっかと開いて…最後の最後まで見届けるんだ あんたはこの…この試合の首謀者なんだから |
5巻 | P156 | 葉子 | 逮捕された段平に差し入れに行った警察署で葉子に会ったとき 話しかけているというよりびっくりして名前を呼んでいる | 葉子…! |
5巻 | P157 | そっち | 上のつづき あなた方と会うのは裁判所や警察署のような場所ばかりと言われて | いつもそっちがろくでもねぇ所へ好き好んでのこのこ出てくるんじゃねぇか |
5巻 | P158 | そっち | 上のつづき 釈放された段平と一緒に白木ジムに来てくれと言われて | お礼に行かないことにはそっちも気がすむまい |
5巻 | P205 | お嬢さん | 新人王決定戦に乗り込んだとき 力石の控室周辺で葉子に会って (ウルフ金串辻斬りクロスカウンター事件の前) | 少年院だの警察署以外で初めて会えましたねお嬢さん |
9巻 | P18 | お嬢さん | 力石死亡の医務室で | もう一度力石の顔を…いいだろうお嬢さん |
9巻 | P118 | あんた | 力石死後の放浪中、偶然会ったスポーツ記者に連れられて入ったゴーゴークラブ「バロン」で踊っている葉子を見て | こういう場所であんたに会うとは思わなかったな |
9巻 | P121 | おめえ | バロンで葉子と口論 ふらふらしているジョーを見て葉子が、力石くんもバカな死に方をしたと言ったとき | おめえにそんな御託を並べられるいわれはねえ |
9巻 | P121 | てめえ | 上のつづき | てめえなんざ死んじまえ |
12巻 | P15 | あんた | ドサ回りから帰ってその足で向かった白木邸で、カーロスとスパーリングをやらせろと頼むとき | 愛しい力石を殺しちまった矢吹丈が未だにこうしてのうのうと生きていることがカンにさわってならねぇあんたにとっちゃ(後略) (カーロスの殴られ役をやらせたいだろうという話に続く) |
12巻 | P18 | セニョリータ | カーロスとのスパーリングが翌日に決まって (セニョールは、カーロスとロバート) | じゃあ決まったぜセニョールセニョリータ |
12巻 | P21 | あんた | カーロスとのスパーリングを16オンスのグローブでやるよう指示されて | こういうろくでもない指示はあんただろうよ |
12巻 | P121 | お嬢さん | カーロスvsタイガー尾崎戦を観にいった会場で葉子のすぐ後ろの空席に勝手に座ったとき | ようようお元気ですか?お嬢さん |
12巻 | P121 | 白木葉子プロモーター | 上のつづき | こうガラガラじゃ、高いギャラ払ってリベラを招聘した白木葉子プロモーターもさんざんの赤字じゃないの |
12巻 | P147 | 葉子さん | タイガー尾崎戦後、ジョーとカーロスのエキシビションマッチが決まったとき | いずれこうなるように仕組まれていたような気がしないでもないがね葉子さん |
13巻 | P58 | あんた | カーロスとのエキシ後、葉子の提案で正式な試合をすることが決まったとき | なんともはや驚いたねあんたって人は |
14巻 | P.1 | 財閥令嬢 | カーロス戦のファイトマネーの小切手の額が契約よりもずっと多いのを見て | とんでもない間違いだぜ しっかりしなよ財閥令嬢! |
14巻 | P73 | あんた | ファイトマネー増額は自分の気持ちだと言う葉子に小切手を突っ返して | なぜあんたと会う度に、まともに話し合いまともに別れることができねえんだ |
14巻 | P189 | あんた | テレビ関東のパーティに主催者は招待していないはずのホセ・メンドーサが来ているのに気付いたとき | …ということは あんたの仕業かい |
14巻 | P200 | あんた | 葉子の誘いでテレビ関東のパーティを抜け出して葉子の車に乗ったとき | どうしたっていうんだい… 人を誘うなんて… きゅうにあんたらしくなくなったな |
14巻 | P207 | あんた | パーティばっくれ後、ボクシングをやめたら?と言い出した葉子に、紀ちゃんと同じことを言うと言い、葉子に紀ちゃんとは誰だと聞き返されたとき | あんたも会ったことがあるだろう… 丹下ジム近くの乾物屋の娘さ |
14巻 | P209 | あんた | 上のつづきの場面 矢吹くんが死に場所を探しているように見えて怖いと言われたとき | あんたはおれを捕まえてリングで死ねといったんだぜ |
15巻 | P225 | あんた | 金竜飛戦前の控え室に葉子が来たとき | あんたも女だてらにボクサーの控え室なんざにしゃしゃり出てくるんじゃねえよ |
17巻 | P48 | 葉子 | ハワイの海で偶然会ったとき。ホセに殴りかかろうとしたところを後ろから葉子に呼び止められて | よ…葉子…! |
17巻 | P48 | あんた | 葉子がホセとの独占契約をケイ決したと報告したとき | おれとメンドーサの世界タイトルマッチはあんたの許可なしでは開催不可能ってことかい |
17巻 | P136 | お嬢さん | ハワイでお土産屋さんに案内してもらったとき。 葉子はいつにないはしゃぎようのジョーに不安を感じて微妙な表情だった | なにを浮かない顔をしているんだお嬢さん |
17巻 | P136 | あんた | 上のつづき(浮かない顔と言われたことに対して)矢吹くんがモテるので妬いただけだという葉子に | あんたプロモーターをやるようになってから いうことに万事そつがなくなってきたね |
17巻 | P137 | 通訳さん | ハワイのお土産屋さんで買いまくる途中 | これいくらだか聞いてくれよ通訳さん |
17巻 | P140 | 美人運転手さん | ハワイ土産を買い物しまくった帰り | そこのお嬢さんがコネさえつけてくれりゃあ このまんまホノルルでメンドーサのやつと 決着つけちまいたい心境なんだがな え?聞こえた?美人運転手さん |
17巻 | P229 | てめえ | 葉子が、ホセの日本での興行権をテレビ関東に譲る条件として、ジョーにホセ戦の前にもう一試合やってほしいと言ったとき | ダレがてめえの選んだ挑戦者なんぞと試合するもんかい |
18巻 | P56 | お嬢さん | 空港で出くわしたハリマオを葉子がジョーの次の対戦相手になるかもしれないと言ったとき | まだこのおれの鼻面をつかんでいるつもりなのかお嬢さん |
18巻 | P56 | あんた | 上のつづき | この際もう一度はっきりさせておくが、おれはあんたの言い成りになんぞ… |
18巻 | P59 | てめえ | 上のつづき ハリマオがジョーを殴ったのを葉子が謝ったのに対して | てめえは引っ込んでろい |
18巻 | P63 | あんた | 空港でハリマオにやり返さずに去るとき | だからきょうのところは勘弁しといてやるよ…けなげな女プロモーターのあんたに免じてな! |
18巻 | P99 | プロモーターのお嬢さん | 白木ジムに乗り込んでハリマオとスパーリングをやらせろというジョーに葉子が返答をためらったとき | どうしたね こざかしいプロモーターのお嬢さんよ |
18巻 | P124 | あんた | スパーリングでハリマオに足蹴にされたとき | ふふ…あんたの作った筋書きどおり… あのエテ公と決着つけざるを得なくなったよ |
19巻 | P130 | おまえさん | ハリマオ戦後、ジョーの控え室にいるカーロスを白木ジムで預かると葉子が言いに来たとき | そうはいかないアホンダラっ おまえさんのようなビジネスのかたまりみてえな残酷女にこうして赤ん坊みたいになっちまったカーロスを渡せるか |
19巻 | P209 | あんた | ホセ戦前の控室で葉子がジョーにパンチドランカーの件を告げ、試合に出ればカーロスのようになると言ったのに対して | あんたがカーロスのことを口にしちゃいけねえ |
19巻 | P209 | あんた | 上のつづき | あんたにはその資格がねえ |
19巻 | P210 | あんた | 上のつづきの場面 試合に出るなと言う葉子に | あんたからご丁寧な忠告を聞かされるまでもなく、以前からうすうす知っちゃいたさ |
19巻 | P211 | あんた | 上のつづきの場面 葉子に控室を出ろと言って | あんたが出ていかないのならおれが出ていくぜ |
19巻 | P212 | あんた | 上のつづきの場面 なおもジョーを引き止める葉子が泣いているのを見て | あんたにも涙って物があるとは意外だったな |
20巻 | P255 | 葉子 | ホセ戦後 | 葉子は…いるかい |
20巻 | P256 | あんた | ホセ戦のグローブを渡しながら | あんたに…もらってほしいんだ… |
※セリフはすべて「KCコミック あしたのジョー」(C)高森朝雄・ちばてつや 2012」からの引用です。
5巻でジョーが紀子を葉子と見間違えて「葉子…!」と言った箇所は、実際の相手は紀ちゃんですがジョーは葉子だと思っているわけで、直接呼んだものとするべきか微妙ですが、除いてあります。
金戦後にもジョーは「葉子はどこだ」と言っています。
ホセ戦後と似た状況ではありますが、金戦後は葉子が見あたらないのでジムの後輩に居場所を聞いているように見えるのに対し、ホセ戦後は、葉子は近くにいると分かっているものの、もうほとんど目が見えなくて葉子の返事を求めたように見えるので、金の時は除き、ホセ後だけカウントしました。
金戦後↓
KCコミック あしたのジョー(16)P123 (C)高森朝雄・ちばてつや 2012
ホセ戦後↓
KCコミック あしたのジョー(20)P255 (C)高森朝雄・ちばてつや 2012
呼び方のフォーマル度は親しさのバロメーターではない
ですよね。
そうではなく「呼び方が変わるとき=親密度が深まったとき」であると言われています。
実際その通りだと思います。
さん付けからちゃん付け、呼び捨てになるといったフォーマル度の違いは関係ありません。
知り合った相手と親しくなっていく過程を思い出すと分かると思います。
同じクラスになったばかりの人のことを、最初は多くの人が使っているのと同じ呼びかたで呼ぶのが普通でしょう。
それが○○ちゃんなら、はじめは右へ習えで○○ちゃんと呼び、特に仲良くなると夏休みごろには呼び捨てしあうようになり、これが数年来のつきあいになると今度は苗字+さんと、逆にかしこまった呼び方に変わったり。
ていねいな呼び方への変化であっても、変わるのは親しさが深まった時のはずです。
また、その時々で自在に呼び方を変えるのは、一般的には最上級の親しさだと言えます。
葉子を様々な呼び方で呼ぶジョーは、最上級の親しさを感じていた?
まさかですよね。
ジョーはなぜ白木葉子を16通りもの呼び方で呼んだのか
本人達にも分からないふたりの距離
たとえば力石との関係のように、やっていることは主に殴り合いで「日曜、アメ横に服買い行かね?」とかの仲のよさはなくても魂はいつも寄り添っていたというような、心で繋がっている、理解しあっている間柄だったとも言いがたいふたりです。
ジョーは葉子の行動について、最初は死んだ力石のため、途中からはビジネスのためと思い込んでいたフシもあり、最後の告白を聞くまでは、まったく葉子を理解していなかったように見えます。
周囲の人は全員気付いてるってのに。
一方で、葉子は何を言っても許してくれる、離れて行かない相手だと思って甘えているように見えるところもあるので、実に微妙なのですが…
呼び方が変わるのは親密度が変わるときであるという説を基に考えると、ジョーは葉子と自分との親しさ、自分との関係をはかりかねていたのかな?と思います。
ジョーの頭の中では、葉子は「葉子」なのですが、本当にそう呼んでいいのかどうか分からない。その戸惑いを言葉のセンスで隠していたのでしょう。
紀子は紀ちゃん
ところで、紀子に対する呼び方は、一貫して「紀ちゃん」です。
こちらは安定した関係を映し出しているように感じられますが、安定しすぎて発展しなかったのか…
普通と逆方向に「あの人も女の事だけはね」って人だからね…
女関係にリソースをさいている場合でもない人生だったし。
サチはずっと「サチ」…これはどう解釈したものか…
ここで見たのは原作の中での葉子の呼び方です。
アニメ編はこちらに